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展覧会概要
展覧会名清親 ―光線画の向こうに
会期 2016年3月12日(土)~ 4月17日(日)
※会期中、一部展示替えを行います。
前期:3月12日(土)~ 3月27日(日) / 後期:3月29日(火)~ 4月17日(日)
会場 町田市立国際版画美術館
東京都町田市原町田4-28-1 TEL:042-726-2771
問合せ 町田市イベントダイヤル:042-724-5656
ホームページ http://hanga-museum.jp/
観覧時間平日:10:00-17:00(入場は16:30まで) / 土日祝:10:00-17:30(入場は17:00まで)
休館日月曜日(ただし3月21日(月・振休)は開館、3月22日(火)は休館)
観覧料 一般800(600)円/大学・高校生・65歳以上400(300)円/中学生以下は無料
※()内は20名以上の団体料金
※展覧会初日3月12日は入場無料
※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)
 または精神障がい者保健福祉手帳をご持参の方と付き添いの方1名は半額

開催趣旨

「新版三十二相」明治15年(1882)
町田市立国際版画美術館蔵

 ガス灯が灯る文明開化の街並みから日清・日露戦争まで、“明治”を描いた浮世絵師、小林清親(1847-1915)。2015年に没後100年を迎え、改めて注目が集まっています。
 清親は弘化4年(1847)、江戸本所御蔵屋敷に下級役人の子として生まれました。青年期には幕臣として伏見の戦いに参戦し、動乱の幕末期を経験します。幕府崩壊後は住居や職業を転々としますが、幼い頃より好きだった錦絵に生活の道を見出しました。明治9年(1876)、新しい東京の風景を叙情的に描き出した『東京名所図』シリーズを刊行。季節や天候の繊細な移ろいを、光と影の巧みな表現で写したこの風景画は「光線画」と呼ばれ、浮世絵界に新たな風を吹き込みました。


 明治14年(1881)を最後に『東京名所図』の制作から離れると、自由民権運動の気運高まるなか、雑誌や新聞を舞台に数々の諷刺画を描きます。また明治27年(1894)に日清戦争が勃発すると、光線画で培った光と影の表現を活かした戦争錦絵を発表。石版画や銅版画といった木版以外の版画技法にも取り組み、晩年には肉筆画も描きました。江戸期には定番だった役者や美人を主な題材とせず、社会の動きや新しいメディアと向き合い続けた清親は、浮世絵史の最後に煌いた、まさに“明治の浮世絵師”といえます。
 本展覧会では、清親の多彩な画業を一堂に紹介いたします。さらには、井上安治や小倉柳村から、織田一磨に川瀬巴水まで、清親に共感を示した絵師の作品を交え、約300作品で清親像を多角的に辿ります。

「千ほんくい両国橋」明治13年(1880) 町田市立国際版画美術館蔵

「眼を廻す器械」『団団珍聞』第508号、明治18年(1885) 町田市立自由民権資料館蔵

  • 1.光線画92点を一挙展示!!

    小林清親「海運橋 第一銀行雪中」明治9年(1876)頃 横大判錦絵 町田市立国際版画美術館

    文明開化の東京を描いた『東京名所図』シリーズから、前期・後期あわせて92点を紹介します。

  • 2.諷刺画が勢ぞろい!!

    小林清親「天福六家撰 田母野秀顕君之肖像」 明治16年(1883) 大判錦絵 町田市立国際版画美術館

    多数の諷刺画を残した清親。鋭い表現は時に発禁処分となることもありました。今回展示する「天福六家撰 平嶋松尾君之肖像」と「天福六家撰 田母野秀顕君之肖像」は、自由民権運動のさなかで起きた「福島事件」を題材にして発禁となった珍しい作品です。

  • 3.挿絵を多数紹介!!

    『百花園』14号 表紙 明治22年(1889) 個人蔵

    清親は子ども向けの雑誌から文芸、落語雑誌、小説、労働組合の機関紙まで、さまざまな挿絵を描きました。あまり紹介されることのない、清親の小画面の世界をお楽しみください。

展示構成

プロローグ 新時代の胎動 ― 江戸後期から明治初期にかけて

幕末から明治初期にかけて刊行された浮世絵を紹介し、清親が登場する以前の色彩や陰影表現を探ります。江戸後期にはすでに光と影に着目した表現が用いられていましたが、文明開化を描いた浮世絵には、赤や紫を多用した鮮やかな色彩表現が大勢を占めていました。

三代歌川豊国「中夏夕涼ノ図」安政2年(1855) 大判錦絵三枚続 町田市立国際版画美術館

第1章 清親登場!― 光線画と洋風表現

清親の代名詞でもある『東京名所図』、いわゆる「光線画」。朝日や夕焼け、真夜中の蛍の光とともに描かれた、味わい深い明治の東京風景をお楽しみください。また、西洋の石版画や油彩画の影響を色濃く示す花鳥動物画もご紹介します。

小林清親「墨田堤の花見」明治9年(1876)頃 横大判錦絵 町田市立国際版画美術館

小林清親「御茶水蛍」明治12年(1879)頃 横大判錦絵 町田市立国際版画美術館

小林清親「大川岸一之橋遠景」明治13年(1880) 横大判錦絵 町田市立国際版画美術館

小林清親「鶏にトンボ」明治13年(1880) 横大判錦絵 神奈川県立歴史博物館

第2章 社会を描く―ポンチの清親

明治14年(1881)、「光線画」に終止符を打った後、清親の次なる活躍の場は諷刺雑誌にありました。時局諷刺雑誌『団団珍聞』では、自由民権運動の高揚のなか、内閣制度や鹿鳴館外交、不景気に対する不満や不安をあらわしました。一方で、人びとの言動をコミカルに描きとった『新版三十二相』や『酒機嫌十二相之内』などの錦絵シリーズも描いています。

小林清親「大飢山」『団団珍聞』496号 明治18年(1885) 町田市立自由民権資料館

小林清親「酒機嫌十二相之内 三人上戸酒癖」 明治21年(1888) 町田市立博物館

第3章 歴史を描く―国粋主義の時代

明治初期に多くの西欧文化が流入した反動により、国粋主義が高まります。歴史上の人物を描いた歴史画は、人びとに国民意識を抱かせるものとして数多く制作されました。社会の求めに応じて、清親もまた多くの歴史画を描きました。

小林清親「平忠盛御堂法師を捕る図」 明治17年(1884)頃 大判錦絵三枚続 神奈川県立歴史博物館

小林清親「明智左馬之助光春湖水乗打唐崎松之図」 明治30年(1897) 大判錦絵三枚続 町田市立国際版画美術館

第4章 戦争を描く―浮世絵の終焉

近代国家としての日本が初めて迎えた対外戦争である日清戦争。錦絵による報道が盛り上がり、清親も版元の求めに応じて多くの戦争錦絵を描きました。清親の戦争表現には、光線画時代に培われた光と影による情景描写が発揮されています。その後、日露戦争が開戦しますが、写真による報道が一般的になっていたこともあり、戦争錦絵は影をひそめます。これを最後に、清親も版画制作から次第に離れていきます。

小林清親「平壌攻撃電気使用之図」 明治27年(1894) 大判錦絵三枚続 神戸市立博物館

第5章 小画面の世界―挿絵と絵葉書

明治20年代、清親は新聞や雑誌の挿絵を多く描きました。子ども向けの雑誌から文芸雑誌、労働組合の機関紙まで、清親は依頼に応じてさまざまな媒体に挿絵を寄せています。また 、明治37年(1904)に妻が開いた店では清親の描いた絵葉書などを販売していました。これまでにまとまって紹介されることのなかった清親の「小画面の世界」をご紹介します。

『小国民』第2年第23号 明治23年(1890) 個人蔵

『小国民』第3年第4号 明治24年(1891) 個人蔵

第6章 風景画ふたたび―新旧のはざまで

光線画の制作から離れた後も、清親は風景画に取り組んでいます。『武蔵百景之内』では、江戸の面影と明治の新しい景観を融合させ、光線画とは趣の異なる風景を描きました。『東京名所真景之内』では、まるで日本画のようなすっきりとした描写を追求しています。ほかにも、銅版や石版による風景画も制作しました。みずみずしい筆致の残る写生帖とあわせて、清親が見つめた風景をご覧ください。

小林清親「武蔵百景之内 品川見越ノ月」 明治17年(1884) 大判錦絵 株式会社渡邊木版美術画舗

小林清親「東京名所真景之内 如月 待乳山雪の黄昏」 明治29年(1896) 大判錦絵三枚続、町田市立国際版画美術館

エピローグ 清親以降―ノスタルジアの系譜

清親が残した93点の光線画は、後世の絵師たちに少なからぬ影響を与えるものとなりました。本展の最後に、清親の弟子・土屋光逸、都市の景観を描いた石版画家の織田一磨、「新版画」を代表する絵師・川瀬巴水の作品を紹介します。

織田一磨「都会夜趣 大阪松島遊郭夜景」大正8年(1919) 石版多色 町田市立国際版画美術館

川瀬巴水「東京二十景 芝増上寺」大正14年(1925) 木版多色 町田市立国際版画美術館

記念講演会「開化の浮世絵師・清親を語る」

講師酒井忠康(世田谷美術館館長) ※手話通訳付き
日時4月3日(日) 14:00~15:30
会場1階講堂
定員先着150名 ※聴講無料 「清親―光線画の向こうに」展(有料)観覧の方が対象です。

美術館が寄席に!清親落語会 

落語家林家正雀
演目「ぞろぞろ」ほか
日時3月27日(日) 14:00~15:00
会場1階講堂
定員先着150名 ※観覧無料
※13:00より1階受付にて整理券をお渡しします。
「清親―光線画の向こうに」展(有料)観覧の方が対象です。

現代作家による公開制作「ツツミ アスカ 時間と層の耀き」
─ 木版拓摺りとインクジェットプリント、古典技法と現代技法の融合─

作家ツツミ アスカ(美術家)
日時3月19日(土) 13:30~16:00 ※途中休憩含む
会場1階アトリエ
定員※入場無料・見学自由
※混雑時は入室を制限する場合があります。

プロムナード・コンサート

演奏小池純子(ジャズピアニスト)
日時3月13日(日) ① 13:00~ ② 15:00~(各回30分程度)
会場エントランスホール

※どなたでもご鑑賞いただけますが、お席のご用意はありません。

ギャラリートーク

項目①館長によるスペシャルトーク
②担当学芸員による作品解説
日時①4月10日(日)
②3月20日(日)、4月17日(日)

※ 各日14:00から45分程度。観覧券をご用意のうえ、2階企画展示室入口にお集まりください。


町田市立国際版画美術館 アクセスマップ
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